ガラパゴスの蛙

ネットに漂うあれこれ

映画「ベルリン、アイラブユー」完成版からアイ・ウェイウェイ監督作品が削除される

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「〇〇、アイラブユー」シリーズの最新作「ベルリン、アイラブユー」から中国人アーティスト 艾未未アイ・ウェイウェイ)監督・出演部分が削除されるというニュースが世界を駆け巡っています。

 

詳しい経緯についてはジャーナリスト Melissa Chanのツイートから追うことができます。

 

 2月8日からアメリカで公開される映画「ベルリン、アイラブユー」は10人の監督による10本のショートフィルムからなる「様々な形の愛」をテーマにしたアンソロジー映画。キーラ・ナイトレイも主演者に名を連ねています。

 

そのうちの一本が世界的な中国人アーティスト 艾未未アイ・ウェイウェイ)の監督作でした。

 

実はこの映画の目玉として彼が起用されていたんですよね。

 

そもそも、アイウェイウェイは中国政府に批判的なスタンスで活動しています。そのことがきっかけで北京の活動拠点は当局によって破壊され、長く軟禁状態にされてしまいます。さらにはパスポートまで没収され、海外への渡航も制限されていました。

 

幸運なことに当時、妻子はベルリンに移住していたので政府の干渉から逃れることができていました。

 

その困難な状況で彼がスカイプを通して一人息子と交流する姿を描いた作品が本作に含まれる予定でした。

 

撮影が始まったのは2015年ごろ。将来公開されるであろう映画に世界中のメディアが注目していました。

 

こちらはベルリンのの日刊紙 ターゲスシュピーゲルのウェブサイトの記事。

www.tagesspiegel.de

 

記事の中では「20年間の映画監督禁止令」を下されたイラン人映画監督 ジャファル・パナヒが車に隠れて撮影した2015年の作品に言及されています。

 

同じように政府から海外渡航禁止令を出された艾未未がどのようにネットを通じて監督しているのかが描かれています。

 

では今回なぜアイ・ウェイウェイの監督作が完成版から削除されてしまったのでしょうか?

 

アイ・ウェイウェイの政治的スタンスが中国政府から目を付けられて圧力がかかっているのは当然の事。

 

それに加えて、この映画ならではの複雑な事情が関係しているようです。

 

「〇〇、アイラブユー」シリーズは、これまで世界のさまざまな都市で撮影されてきました。ニューヨーク・パリ・リオ・トビリシなどなど。

 

さらに2019年、中国を舞台にした「上海、アイラブユー」公開を控えているそうで。。。

 

制作側としては「ベルリン、アイラブユー」で波風が立って、「上海、アイラブユー」の公開がポシャってしまうことを恐れたのでしょう。

 

DW(ドイチェ・ヴィレ)の中国語版を読むと、ベルリン映画祭の主催者側から出品について難色を示されたという情報も出ています。

 

www.dw.com

 

ハリウッドでは近年、中国資本の制作会社が大きな影響力を持つようになっていることは良く知られています。

 

日本公開されたヒット作のクレジットを見ると、中国企業の名前があることに気づいた方も少なくないはず。

 

中国マーケットを無視してまで、政治的なメッセージを発信することはリスクが大きすぎる、というのも理解はできますが。。。

 

そもそも、アイ・ウェイウェイ当人に完成版から削除されることが知らされなかったというのがショッキング。

 

映画界に暗い影を落としそうな出来事でした。

 

個人的には、カットされてしまった作品が、何らかの形で公開されることを願っています。

 

日本公開時にはこの事件について微塵も触れられないんでしょうね。

 

いろいろ書いてきましたが、本作に加わったそのほかのショートフィルムに罪はないわけで。

 

公開を気長に待ちましょう!

 

皆様もよろしければ是非に。

 

 

2009年公開 ニューヨーク,アイラブユーには岩井俊二監督も参加しています。

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