ガラパゴスの蛙

ネットに漂うあれこれ

『世界で一番ゴッホを描いた男』のその後

ずっと気になっていたドキュメンタリー映画『世界で一番ゴッホを描いた男』をやっと見ることができました。 

BS世界のドキュメンタリーで短縮版が放送されていたのでご存知の方も多いかと思います。 

中国は深センの大芬村でゴッホの複製を描き続ける男性が主人公。職業画家としての日常や家族・同僚との関係性が前半で描かれ、後半は主人公の男性がアムステルダムゴッホの絵に実際に触れたことから始まる心境の変化や葛藤が描かれていきます。

20年に渡りゴッホのコピーを描き続けてきたものの、原作に遥かに及ばないと語る主人公の姿が印象的です。そして映画の最後ではコピーではなく自分のオリジナル作品を描き始めるのです。

ドキュメンタリーと謳いつつも非常にドラマチックな作品です。

さてこの映画を見ていて、今この人はどうしているのだろう?という疑問が浮かんできます。

こういう時はGoogle先生に聞いてみるのが一番。

そしたら出てくるではないですか。

新華網が2019年2月19日に配信している、こんなニュース記事を見つけました。

m.xinhuanet.com

日本語に意訳すると「転換期を迎える"中国油絵ナンバーワンの村"」と言いましょうか。

大芬村についてのレポートを簡単に訳したいと思います。

深センは龍崗区には特別には独特な村がある。1200余りのアトリエに8000人を超える画家が集まり、国内外に作品を発信している。

中国油絵ナンバーワンの村とも呼ばれる大芬村は絵画市場の変化に伴い、村の歴史が始まって30年以来はじめての大きな転換点に差し掛かっている。コピー絵からオリジナル作品を主とする変化を遂げようとしている。

2005年前後、中国の輸出する油絵の80パーセントは大芬村で描かれていた。国内市場のコピー絵に対する需要が下がり、高品質のオリジナル作品が求められるようになり、大芬村では画風や画家が少しずつ変化するようになっている。現在、大芬村ではオリジナル作品を制作する画家が300人近く存在し、油絵全体の生産量の20-30パーセントを占めるようになっている。大芬村では今まで見られなかったアートセンターやカフェ画廊などの新しい業態が見られるようになっている。2017年の数字では大芬油絵村の全体の生産額は41.5億元(690億円)に達している。 

記事の中では大芬村で撮られた写真が掲載されていますが、注目したいのは『世界で一番ゴッホを描いた男』の近影です。

それがこちら。

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映画をご覧になった方ならご存知かと思いますが、彼のお名前は趙小勇。

ドキュメンタリーの中では狭いアトリエの中で奥さんや同僚と大量の汗を流しながら、裸で筆を執っていた姿とても印象的でした。

この写真のキャプションからすると、現在彼のアトリエの半分はゴッホの模写。もう半分をオリジナル作品で飾られているようです。

ゴッホのように発狂していなかったことに一安心です。

浙江省にもう一つご自分の画廊を作って、そこでは奥さんが絵画を販売しているという情報もあります。

このドキュメンタリ―作品が最初に公開された年が2016年。それから3年が経ち中国経済やアートシーンも大きな変化を遂げています。彼女のゴッホの模写スキルも目を見張るものがあります。

映画の中では職業作家が芸術家へと大きく変化するきっかけしか描かれていませんでしたが、今でも着実にアートシーンで存在感を発揮しているようです。

専門的な訓練を受けていないという意味では、広義のアウトサイダー・アートに含まれるのでは?となんとなく思っています。

言論の自由の制約はあるものの、中国のアートシーンは本当に目が離せませんね。

こちらの映画は本当におもしろいので劇場もしくはDVDで。皆様もよろしければ是非。

世界で一番ゴッホを描いた男 [DVD]

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