ガラパゴスの蛙

ネットに漂うあれこれ

2020年VLOG界隈をざっくり振り返る

混乱の2020年も終わろうとしていますが皆さまいかがお過ごしでしょうか。

2020年のVLOG界隈(実際にそんなものがあるかは別として)は激動の一年と言えるでしょう。

コロナ禍による混乱、ステルス・マーケティングの是非、ネット民の中傷による活動休止などネガティブな話題が飛び交う一方で、数年に渡る動画投稿が実を結び、新たなビジネス展開に打って出るVloggerが目立った年でもありました。

あくまでも私が観察している範囲内ですが、幾つかのトピックを振り返ってみましょう。

【中国】コロナ禍にめげず李子柒と滇西小哥が大躍進

・李子柒

中国・武漢震源地とされるコロナウイルスの蔓延はVloggerたちの活動に大きな影響を与えました。

とりわけ李子柒はこの有事に際して動画更新を完全にストップ。自身の会社の力を尽くしてありったけのマスクや衛生用品を現地に届けていました。

その後、動画更新が再開されないことに痺れを切らしたフォロワーやメディアの間では「李子柒が失踪」という言葉も飛び交いました。

蓋を開けてみると事の真相はハイペースの活動に体調を崩していたことからくる長期休暇。確かに初期の頃から比べるとかなり痩せていることが見て取れます。

2020年4月29日には李子柒のYouTubeチャンネル登録者数1000万人を達成。

国内では地元行政や中央政府と関連のある団体に加わり、ますます活動の幅が広がっています。自身の食品ブランドの工場建設などビジネスの話題にも事欠きませんでした。

李子柒は国内外で名実ともにトップVloggerの座を手にしたと言えるでしょう。

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・滇西小哥

滇西小哥も雲南省の小さな村で着実に影響力を伸ばしています。

元々自給自足に近い生活スタイルなので、コロナ禍の影響はさほど大きくなくコンスタントな更新が続きました。

2020年2月6日の更新では阿盆姐からコロナウイルスと闘う医療従事者へのねぎらいや、個人としてできる対策に言及していました。

滇西小哥ブランドの展開も順調に進んでいますが、一番大きかったのは2月に公開されたGoldthreadのインタビュー動画でしょう。

これまで語られてこなかった家族構成や警察官時代のエピソード、住んでいる村の様子が紹介されていました。全編英語字幕が付いたことで海外ファンが増えたことは想像に難くありません。

現在では毎週水曜or金曜の定期更新で、地元の村にとどまらず雲南省各地の少数民族に伝わる伝統文化や料理を紹介しています。

2021年も雲南省のPR大使として中国内外で活躍することが見込まれます。

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【韓国】裏広告問題に揺れるYouTube、それでもVloggerのビジネス展開が目立つ

2020年の韓国YouTube界は裏広告問題に揺れた一年でした。

有名どころから中堅配信者に至るまで、企業から商品提供されているにもかかわらず、それを明記していなかったことが騒動の発端となりました。

ネット民の猛烈な攻撃によりチャンネル閉鎖・引退・活動休止に追い込まれた配信者、PR動画と明記していたにもかかわらず釈明せざるをえなくなったVloggerなど悲喜こもごも。対岸の火事として日本から炎上騒動を眺めていましたがやりすぎ感も否めない…

9月には新たな規制が始まり、多くの動画配信者がスポンサー付き動画の表示を義務付けられることになりました。

モッパン動画『문복희 Eat with Boki』チャンネルは広告問題に加えて、ボキさんが実際には食べたものを吐き出しているのでは?という疑惑も持ち上がり壮絶な批判を受けていました。

この疑惑を受けて動画更新は7月を境にストップ。Instagramも鍵がかけられた状態が長く続きましたが、11月に新しい動画を公開。

「初心に戻って活動します」と宣言したものの、相変わらずコメント欄は厳しい言葉が並びます。字幕の選択肢が増えたことからすると、今後は海外の視聴者をメインターゲットに見据えているのかもしれません。

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・ondo

ネガティブな話題はVloggerにも及びました。ondoさんはチャンネル登録者数100万人達成という喜ばしい出来事があった一方で、年明けにいきなりデザイン盗作疑惑が持ち上がり活動休止。もはやYouTube引退かと思われた矢先に活動再開。しかし再び活動休止宣言…ご本人のメンタルが心配されましたが、2020年後半に製本ワークショップの スタジオを開くと同時にVlogは定期更新に戻りました。コメント欄は閉鎖しておられますが、Twitterを見ると東南アジアでも熱心なファンが多く存在していることがわかります。彼女のセンスが世界中の人々に支持されていることが垣間見えます。

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onuk

onukさんはコロナ禍の中でも安定の定期更新が続いています。視聴者の側からは毎週の動画を楽しみにしていれば良いだけですが、自身のファッションブランドを切り盛りする実業家でもあることを考えると驚異的な仕事ぶりです。コスメ・ファッション・フードとジャンルを問わず広告案件がやってくる様子からは、多くの企業が彼女のVlogに注目していることがわかります。先日の新聞へのインタビュー記事掲載はVloggerの到達点を見たような気がします。

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・sueddu

suedduさんは安定の毎週土曜の動画更新。私生活では新しい家に引っ越したり新車の購入など大きなイベントがありました。オンラインVloggerアクリル画講座・エッセイの出版・講演会などなど、韓国Vlog界のパイオニアとして着実に活動の幅を広げています。YouTubeが「視聴者による字幕翻訳ヘルプの廃止」を発表した際の嘆きが印象的でした。ファンが訳してくれると助かりますよね…今年公開されたQ&A動画では彼女の結婚観やフェミニストとしての思想も際立っていました。インディペンデントな生き方、男女を問わず憧れる人が多いのではないでしょうか。

・HYONYEO

HYONYEOさんのVlogはいつか紹介したいと思いながら、書きかけた翻訳記事が塩漬けになったまま時間が過ぎてしまいました。2018年2月以来カフェめぐりやライフスタイル動画を投稿していましたが、2020年7月以降は自身が経営するカフェの開店準備の様子が時系列で公開されていきます。カフェ好きが高じて自分でカフェを開いてしまったのです。チャンネル登録者数は約16万人と飛び抜けて多いわけではありませんが、世界中から応援コメントが寄せられています。彼女はVlogドリームを掴んだ配信者と言えるでしょう。お店が続くことを祈っています。

【インド】village food factoryに新展開

このブログを始めた初期の頃にインド発のヴィレッジフード動画について取り上げました。その後も多くの類似チャンネルが登場しそれぞれの配信者が特色を出した結果、今やチャンネル登録者数100万人超えなど当たり前。

そんな中でも大御所チャンネル『village food factory』ではレストランを開業するまでに成長しています。「Daddy Arumugam Biryani Hotel」という看板を掲げたお店では主にビリヤニを提供しているようです。(なぜホテルなのかは謎)ここに来店したカメラを持った客が店内の様子をYouTubeに投稿しています。

料理やサービスの質と値段のバランスに改善の余地があるようですが、基本的に好意的なコメントが見受けられます。今後の展開に注目です。

www.youtube.com

 

 

【日本】テレビの人気者がYouTubeに参戦する一方で、方向転換を模索する配信者も

2020年の日本ではとにかくタレントのYouTubeチャンネル開設が続きました。この大きなうねりの背後にはテレビ界で活躍する放送作家の方々の存在があります。YouTubeチャンネルの企画出し・撮影・編集などを担当しておられるようです。2019年12月26日発売のクイックジャパンPUNPEE特集)では「今年のYouTubeシーンを放送作家はどう見たのか⁉」と題する対談企画が組まれ、国内外のホットなYouTuberやVloggerに言及されていました。こうした流れを受けてなのか、テレビ番組で”モーニングルーティン”という言葉を聞くことが増えた印象があります。タレントちゃんねるの対談・雑談・ゲーム配信・モッパン・ネタ動画と並んでVlogが加わるパターンがこれからも増えていきそうです。

クイック・ジャパン147

クイック・ジャパン147

  • 作者:PUNPEE
  • 発売日: 2019/12/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

日本の話題で忘れてはいけないのが『inliving.』チャンネルの新展開です。 

サブチャンネルやゲーム配信など、最近ではVloggerというよりもYouTuber色が強くなっていたのですが、2020年12月26日の最新動画(字幕の文面)で方向転換を宣言。今後はカメラに向かって話すことはなく、当初の静かなスタイルに戻ることを報告していました。ファンにとっては寂しい出来事ですが、静かな動画ほどノンバーバルなコミニュケーションが成立するのも事実です。世界的なVlog人気の要因のひとつが「淡々とした日常の発信」であることは間違いありません。ご本人の意図はわかりませんが、言葉がなくなることで海外の視聴者に訴求するVlogへと変貌していく予感がします。

【おまけ】個人的に今注目している配信

2020年VLOG界の動向を取り上げてきましたが、最後に個人的に気になっているYouTubeチャンネルをご紹介。

今年お気に入りのテレビ番組はNHKEテレで放送されている『浦沢直樹の漫勉 neo』なのですが、この番組の前進となったのが2015年放送の『浦沢直樹の漫勉』。浦沢直樹さんが名だたる漫画家の職場にお邪魔して、作業風景のVTRを観ながら対談するドキュメンタリーです。

あまり大きな声で言えないのですが、2015年放送分が某Tubeに投稿されていて視聴可能となっています。更に驚いたのがこの動画、全てのテロップ・全ての音声に英語字幕が付けられているのです。この動画を世界中の漫画ファンや漫画家志望の視聴者が食い入るように観ていることがコメント欄から伝わってきます。もちろん削除されても文句は言えませんが…

前置きが長くなりましたが、2020年要注目の配信は『浅野いにおと畳ゆか/深夜の作画配信』です!こちらは漫画家ご本人が作業風景を映しながら雑談するという贅沢な配信。白い画面に人物が描かれて命が吹き込まれていく様子には息を呑みます。そして驚くべきはこの配信、リアルタイムで浅野いにお&畳ゆか(敬称略)の全発言をチャットで英訳している方がいらっしゃるのです。この翻訳スピードと正確性、只者ではない。海外の視聴者も彼?彼女?のハードワークに感謝のコメントを書き込んでいます。本当に凄いです。

そんなわけで2020年VLOG界隈を振り返りました。

最近の『ガラパゴスの蛙』は中国語翻訳やVLOG読み解き系ばかりで新しいチャンネルを紹介できていないのが実情です。来年はもうちょっと腰を据えて世界に目を向けたいと思っています。

定期的に覗きに来てくださる方がいらっしゃるお陰で継続のモチベーションになっています。

今年もありがとうございました。2021年も細々と続けていきたいと思います。