李子柒が新华网のインタビューに答える動画が公開される(2024/11/13)

2024年11月13日、中国メディア 新华网のウェブサイトにて李子柒がインタビューに答えた19分の動画やその内容を要約した記事が配信されました。その後、YouTubeや世界中のSNSで全編もしくは切り取り動画が拡散され続けています。
今回のインタビュー動画は、おそらく活動再開(?)のタイミングを見越して事前に撮影されたものと思われますが、3年の沈黙期間中に何を行っていたのか、これからどんな活動を見据えているのかなどかなり具体的な話題に触れています。彼女の受け答えからすると、ピーク期のYouTube動画を頻繁に更新していた頃から比べると、動画制作のペースは少し落としていくことが予想されます。詳しい内容は下記の日本語訳をご覧ください。
インタビュアー:子柒さん、お久しぶりです。
李子柒:お久しぶりです。
インタビュアー:大体3年ほど動画を更新していなかったので、心配しているファンも多いかと思いますが、この3年間、何をして過ごしていたのか教えていただけますか?
李子柒:寝ていました。以前徹夜した分の睡眠を取り戻すように。そして、祖母と一緒に過ごす時間ができました。動画制作のときは、彼女がずっと私の世話をしてくれて、深夜でも食事を用意してくれたんです。この3年は、祖母を外に連れて行って、新しい景色や美味しいものを一緒に楽しむ時間ができて、本当に良かったですね。また、この3年間で大きな収穫がありました。20以上の省を訪れ、100人を超える無形文化財の伝承者や文化関係者と出会えたんです。その経験が、今後の活動に向けた原動力や方向性を見つけるきっかけになりました。
インタビュアー:この3年間、皆さんもあなたのことを気にかけていましたが、なぜ今このタイミングで動画を更新しようと決めたのでしょうか?伝えたいメッセージがあるのでしょうか?
李子柒:更新することを決めたのは実は1か月ほど前です。この3年間、ネットでは活動していませんでしたが、毎年のように復帰の噂が流れていました。本当は、自分の今取り組んでいることが形になってから皆さんに会いたかったのですが、最近また復帰の噂を目にして、皆さんが心配したり憶測したりしないように、自分からこの3年間に何をしていたのか、そしてこれから何をするつもりなのかを伝えることにしたんです。今回の動画も、特に深い意味はなく、一気にできた分を公開したという感じですね。
インタビュアー:長年待ち望んでいた皆さんにとって、あなたの作品は特別なものです。今回の作品では、従来のライフスタイルを紹介するシリーズに加えて、無形文化財への注目が見られますが、これはあなたが今後の活動の方向性として表現したい意図があるのでしょうか?
李子柒:6~7年前、手工芸の職人を訪ねたときは、技術を学ぶのが目的でした。しかし、最近は時間に余裕ができ、彼らの話を聞き、一緒に過ごす中で、伝統文化は高尚なものだけではなく、日常の生活にも根付いたものだと感じるようになりました。2018年に、江蘇省南通の王振興さんのもとで藍染を学んだとき、彼の3人の子供も一緒に学んでいましたが、お孫さんは継いでいないと言っていました。「まずは生活を安定させるのが優先」とのことでした。しかし、近年、伝統文化への関心が高まったことで、今年再び訪ねたときには、新しいデザインの布を見せてくれて、それが若者の好みにも合うものになっていました。「デザイナーを雇ったのか?」と聞くと、「孫がデザインをしているんだ」と誇らしげに教えてくれました。この瞬間、伝統文化が現代に合った形で進化する意味を感じました。時代の流れに乗り、私たちの生活の一部となることで、技術を学びたい人が増え、伝統文化の自然な継承が進むんです。私もこの分野で何ができるかを考え、今後も伝統文化に関わる活動を続けていきたいと思っています。
インタビュアー:これまで多くの職人や無形文化遺産の伝承者に触れ、今回もその作品を動画で紹介されていますが、特にお気に入りのものはありますか?
李子柒:どれも好きですが、特に印象に残っているのは最初に投稿した漆器の動画です。これは痛みと喜びが入り混じった経験でした。昨年の春にこの動画を作ると決めたとき、おじさん(カメラマンのニックネーム)に「もしかして私は漆を扱うために選ばれた人間かも」なんて大口を叩いたんです。でも、初めて漆を削って帰宅したら、顔がテレビのように腫れ、体中が真っ赤な腫れで覆われました。おじさんとミングオ(助手)も痒みで眠れず、体中掻き傷だらけ。耐えきれず、アレルギーの注射を受けに病院に行ったり、防護服を着て作業したりもしました。でも、暑い中の防護服は汗だくで、かえって大変でした。とはいえ、アレルギーには耐えればいいと思っていたんですが、最後には作品が失敗してしまいました。
インタビュアー:失敗したんですか?
李子柒:ええ、そうです。漆の彫刻で「隠し模様」が表れる魅力は、通常の光では黒く見え、強い光を当てると金色の模様が浮かび上がるところです。それが中国人の内面的な性格、控えめに見えて実は豊かな内面を持つ性質と似ていると感じて作ったんですが、最後の磨きの段階で、懐中電灯で照らすと金の線はあるものの模様が見えなくて、その時、天が崩れ落ちたような気持ちでした。尹利萍先生に電話してトイレで泣きました。仲間たちがこの漆器を完成させるために数か月間アレルギーで苦しんで、体中が傷だらけになりながらも文句を言わず支えてくれたのを思うと、ますます悲しくなり、電話口で涙が止まりませんでした。先生は私が泣き終わるまで黙って聞いてくれて、そして、「アレルギーは当たり前よ、私は50年漆を扱っているけど、今でもアレルギーが出るし、失敗だって普通よ。経験豊富な職人でも漆の性質を熟知していなければ失敗することがあるのだから。」と励ましてくれました。「失敗があるからこそ成功がある。失敗を畏れ、漆工芸を尊重するべきだ」と教えてくれました。その後、作品を磨き直し、さらに3か月かけて手順を最初からやり直し、ちょうどお正月に完成しました。祖母への新年の贈り物にしたんですが、祖母は強い光で浮かび上がった模様を見て「これは龍?」と聞いてきました。私は「違うよ」と答え、次に「恐竜?」と聞かれた時も「違う」と答えました。実は「麒麟の振り返る姿」を参考に模様を描いたんです。「麒麟が振り返れば百病を消す」という言葉があるので、彼女の健康を願って作ったものでした。
インタビュアー:そうだったんですね。
李子柒:それと、動画の最後のシーンも特に好きで、祖母と一緒に窓の外の雪景色を眺めている場面です。編集している時、そのシーンがとても気に入って、8秒間そのままにしておきました。「もっともっと、こんな日々がもっと続けばいいな」と思い、切りたくなかったんです。この動画を作る中で最も長く撮ったシーンですが、特に印象深いものになりました。
インタビュアー:ネットで有名になったブロガーとして、3年間で多くのことが起こり、世間の好みも変わりやすくなるかもしれません。ご自身や作品が忘れ去られるのではと不安に感じることはありますか?
李子柒:実は2022年末、ようやく自分の問題が片付いた頃に更新しようと思っていました。でもその春節に、凉粉(中国の寒天状の料理)を売るおばさんと出会い、少し考えさせられることがありました。祖母と「雲台観」という場所に行き、お腹が空いたので凉粉を食べたんです。おばさんが自分の凉粉を撮影して投稿した動画が多くの人に見られ、遠方から買いに来る人もいると教えてくれました。その時、インターネットが昔とは全く違うと気づかされました。数千年の歴史の中で、自分の喜怒哀楽や才能を一瞬で何千万人に伝えられる時代なんて、これまでなかったんです。たとえ凉粉を作るおばさんでも。今は文化を発信するのに適した時代であり、私もショート動画を長年作ってきたので、この分野には慣れていますが、今年で35歳ですし、新しい挑戦をしてみようと決めました。インターネットやショート動画、テクノロジー、AIといったものも、私の生活や文化を発信する手段になり得ると思っています。だから、もっと先に進んで新しい足跡を残せたらと考えています。
ただ、「忘れ去られる」ことが必ずしも悪いことだとは思いません。過去3年間、少しばかり忘れられた日々がありましたが、自分のことに集中し、誰にも邪魔されずに考えを深める時間が持てました。流量(ネットの注目度)があるのも良いことで、そういった注目を活用して有意義なことができるのも素晴らしいと思っています。
インタビュアー:この1年で、インターネット上にはたくさんの自媒体のブロガーが登場し、多くの「李子柒風」の動画も増えました。そして今回、あなたは再び「李子柒スタイル」の象徴的な作品を発表しましたが、みんながこのスタイルをもう好きでなくなるのではないか、あるいは世間の美意識が変わって、あなたの独自性が薄れてしまうのではないかと心配することはありませんか?
李子柒:2018年のことを話しますね。当時、東原の木活字の技術を扱える人がまだ2人残っていると友人から聞いて、急いで習いに行きました。それから木活字の歴史を詳しく調べ、文章にまとめました。その時、本当に失われかけているこの技術がもっと多くの人に見てもらえればと強く願いました。そして、もっと多くの人が学んだり広めたりしてくれる、あるいは親が子どもに物語として語ってくれるだけでも価値があると思ったんです。なので、活字が各時代を経て今日の形に至るまでを図文でまとめて発表しました。その最後の段落を書いているとき、思わず泣いてしまいました。他で読んだ「多くの伝統文化は、過去を振り返る老人のように、自分の存在価値をこの時代に見出そうと切望している」という言葉が心に残っていたんです。今では、伝統文化の職人やそれを広める自媒体の方々が増え、その「老人」が多くの人に見てもらえるようになりました。これは社会全体の協力があってこその結果です。私一人では到底成し得なかったことです。私の作品が独自性を保っているかどうかはもはや重要ではないと思っています。むしろ、この方向に向かう人が増えてほしいと願っています。私は、さまざまな方法で、この「老人」に若い血を注いで、時代と共に前進してもらいたいのです。
インタビュアー:先ほど、今後の計画について少しお話されましたが、今回の動画発表に続き、今後どのような方向性で仕事やキャリアを展開していく予定でしょうか?
李子柒:今は主に伝統文化の革新やエコロジーに関する活動に取り組んでいます。たとえば、職人の知的財産権の保護や、そのための体系づくりです。さらに、この2年間での調査を通して気づいた、伝統文化の職人が抱える現実的な問題にも対処していきたいです。職人の多くは年齢が高く、インターネットに馴染みが薄いです。そこで、年配の伝統職人と若い自媒体のクリエイターが互いに助け合う仕組みを考えました。クリエイターが職人にライブ配信や短編動画の撮り方を教えたり、若いデザイナーが伝統工芸品に若々しいデザインを提案したりする。職人はクリエイターに技術を教え、発信する内容の監修も行い、誤解を避けられるようにする。こんな感じの活動を予定しています。
インタビュアー:今後の計画の中で、商業的な展開も視野に入れていますか?
李子柒:もちろんその点も考えていますが、具体的な計画はまだありません。自分の好きなことを続けられて、それが認められて価値あるものであり、収益も得られるならとても幸せですね。
インタビュアー:今回多くの動画を公開しましたが、今後も定期的に皆さんと会えるようになるのでしょうか?動画の更新が突然途絶えたりはしないでしょうか?
李子柒:動画制作自体はやめるつもりはありません。自分の生活や伝統文化の素晴らしさを皆さんと共有するのが好きですから。ただ、更新のタイミングは今後もっと自由になるかもしれません。今は目の前の仕事が忙しいので、一つずつ取り組んでいくつもりです。私は一度に一つのことしかできないので、一つ一つ着実に進めていきたいと思います。
インタビュアー:今日の話を聞いて、多くの方があなたの率直な言葉から、今後の新たな挑戦や進むべき方向を感じ取ったと思います。応援してくれる人々にメッセージをいただけますか?
李子柒:正直、この質問が一番緊張しました。うまく表現できないかもしれないと心配でしたが、心の底から感謝しています。この9年間、皆さんが見守り支えてくださったことには本当に感謝しかありません。多くの方が私の成長を見届けてくださったと思います。昔の私はたくさんの欠点を抱え、自信がなく、挨拶すら恥ずかしくてできないような子でした。でも皆さんから無条件の愛をもらい、次第に自信を持つことができました。自分が愛される価値のある人間だと知ることができました。皆さんのおかげで、少しずつ今の自分へと成長することができたのです。
仕事の面では、かつてはスマホで撮影する初心者でしたが、今では少し慣れて、多少の成果も上げることができました。現在は、さらに高い目標を持っています。将来どのような結果になるかはわかりませんが、全力で挑戦してみたいと思っています。自分の選んだ道が正しく、意味のあるものであると信じているからです。皆さん、本当にありがとうございました。皆さんが恋しいです。
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